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平成29年度 問2
【問 2】所有権の移転又は取得に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 Aの所有する甲土地をBが時効取得した場合、Bが甲土地の所有権を取得するのは、取得時効の完成時である。
2 Aを売主、Bを買主としてCの所有する乙建物の売買契約が締結された場合、BがAの無権利について善意無過失であれば、AB間で売買契約が成立した時点で、Bは乙建物の所有権を取得する。
3 Aを売主、Bを買主として、丙土地の売買契約が締結され、代金の完済までは丙土地の所有権は移転しないとの特約が付された場合であっても、当該売買契約締結の時点で丙土地の所有権はBに移転する。
4 AがBに丁土地を売却したが、AがBの強迫を理由に売買契約を取り消した場合、丁土地の所有権はAに復帰し、初めからBに移転しなかったことになる。
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超わかる解説
1 誤っている
時効で所有権を取得するのは、取得時効の完成時ではなく、占有の開始時です。
Bが、A所有の甲土地に、勝手に家を建てるなど、その占有を開始して、その後、10年(または20年)経てば、取得時効が完成します。
そして、その後、Bが、「時効が完成したから、この土地は俺のもんだ!」と、取得時効を援用すれば、
その時効を援用した日ではなく、
その時効が完成した日でもなく、
その占有を開始した日にさかのぼって、最初っから、その土地はBのものだった、という扱いをするんです。
時効の制度は、よく分からない権利関係を、分かりやすくする制度なんです。
もし、時効が完成した日からBのもの、ということになると、それまでのBの占有は、いったいどうなるのか・・・などと考えると、面倒くさいんですね。
そこで、スッキリと分かりやすく、占有を開始した日から、つまり、最初っから、その土地はBのものだった、という扱いをするんです。
2 誤っている
これは、普通に考えて、あり得ないですよね。
Cさんの立場に立って考えてみましょう。
自分(C)の知らないところで、赤の他人Aが、勝手に自分(C)の家をBに売ってしまって、Bが勝手にそれを信じて買ったら、自分(C)はマイホームから追い出される、って、「そんな馬鹿な!」です。
では、これを、正確に見ていきましょう。
今回のAB間の契約は他人物売買という売買契約であって、契約自体は有効になります。
ただ、あくまで他人の物ですから、このままでは所有権が移転して、Bのものになることはないんです。
そのため、売主Aは、「売ります!」と契約した以上は、改めて所有者Cと売買交渉をしなければならず、そこで上手く建物を買い取ることができれば、買主Bとの約束を果たすことができるのです。
そして、この場合、売主Aが所有者Cから建物を買い取る契約をしたときに、その所有権はAに移転し、そして、その瞬間に、その所有権はBに移転することになります。
このように、先に「売る」という契約をしておいてから、後から「買う」という契約をして仕入れる、というのも、OKなんですね。
ちなみに、今回の問題で混乱しそうなのは、即時取得の制度です。
しかし、この制度が適用されるのは、動産に限定されますから、今回のような建物の売買では適用されません。
3 誤っている
民法には、「契約自由の原則」という考え方が有って、どのような契約を結ぶのかは、原則として自由なんです。
そのため、売買契約において、所有権の移転時期をいつにするのかも、当事者の自由ですから、代金の完済まで所有権を移転しない特約も有効なんです。
そして、この「お金を払ったら、土地は、あなたのもの」という特約をした場合には、その特約の通り、代金完済の時点で、所有権は買主に移転します。
なお、所有権の移転時期について、特に契約をしなかった場合には、
「売りましょう」
「買いましょう」
の瞬間に、売買契約が成立すると同時に、所有権が移転するのが原則なんです。
お金を払わなくても、登記名義を移さなくても、引き渡しをしなくても、契約をしただけで「買ったから、俺のもんだぜっ!」となるんですね。
この、法律の原則自体が、ちょっと変な感じなので、
実際の不動産の売買では、今回のように、「お金を払ったら、あなたのもの」という特約を付けることが多いんです。
4 正しい
強迫をされて意思表示をしたときは、取り消すことができます。
そして、取り消された行為は、初めから無効、とみなされます。
このように、今回の問題は、取消しの効果が、さかのぼるのか、さかのぼらないのか、を聞いている問題ですね。
結論としては、取り消した時から無効になるのではなく、さかのぼって最初っから無効になる、ということです。
そのため、Aが売買契約を取り消した場合、初めからBに移転しなかったことになるんです。